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2016.07.16 相梅雨

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「なんだもう帰るのか、梅雨」
言いながら彼は背中から腕を伸ばして、私をその長い腕の中に閉じ込めてしまった。
彼は知り合った当初を考えたら驚くくらい、甘えたになった。
でもそれも、自分だけにみせている彼の一部なのだと思うと、嬉しさしかこみ上げないから現金なものだ。
卒業してから2年。やっと最近普通の当たり前の恋人同士になれたようで嬉しい。

「泊まっていけば良いだろ」

彼の可愛い我侭はとまらないけれど、私も折れるわけにはいけなかった。
本当は私だって泊まって行きたかったけれど。

「だめよ、消太さん。明日は早いんだもの。ここからじゃ現場まで遠いし、遅刻しちゃうわ」
「朝おれが起こしてやる」
「だめ」
「つーゆ」
「可愛く言ってもだめよ」

本当にあの学生時代恐れられた先生だろうか?という疑問すらわいてくるレベルの甘えっぷりに、苦笑さえうかんだ。
後ろからは沈黙がきこえる。諦めたかしらと、腕から逃れようとすれば、
ぐいっと引き戻され、背中にちゅうっとしつこい位の口付けを感じた。

「消太さん?」
「……解った。もっと立地のいいところに引っ越そう。それで一緒にくらそう。
そうすればもっと一緒に居られるし、合理的だ」

背中の方から、少しだけ弾む声がする。
自分でも名案だと思ったのだろう。
正直私も願ってもないことで、とってもとっても嬉しかった。
嬉しかった、が。
彼の表情をひとつも取りこぼしたくはないのだ。
どんな言葉を発するときだって、その顔を、その表情をみて、記憶して居たいのに。

「……そういうことは、顔を見て言って欲しかったわ」

私がそうポツリと零すと。
先生の腕が、私の体をぐるっと回転させた。
そうしていままでみたこともないくらい真剣な顔で、此方をみつめる。

「梅雨、一緒に暮らそう。籍も入れよう。お前がいやじゃないなら、俺と一緒に墓に入ってくれ」

同棲の話しだと思ったのに、一気に結婚までとんだ。びっくりだ。
なし崩し的にプロポーズをされてしまった。
こんな事後の、私はまだシーツ1枚包まったままで、先生も上半身裸のままで。
理想のプロポーズとは全く違うシチュエーションで。
でも、それでも、返事なんか最初から決まっていた。
どんなシチュエーションだって、それがどんな言葉だって。
私の返事は最初からたったひとつしかないのだ。

「…はい。とっても嬉しいわ、消太さん」

ケロケロ、と嬉しげに喉が鳴ったのをみて、先生も頬を緩ませた。
その顔は本当に私しか見ることの出来ない、特別な顔。
ああ、かわいいひと。
私の前ではとてもかわいいひと。

「先生、とても好きよ」

感情のままに唇を重ねにいくと、ふ、と笑みが合わさった唇からこぼれた。

「吃驚すると、先生に戻る癖まだなおんねえなあ」

そういいながら彼は、私が大好きな優しい顔で、静かに微笑むのだった。




***
「あなたは★時間以内に★RTされたら、背中にキスするいちはなの相梅雨の絵を描きますす」

ていう診断が出たので、そのらくがき。と、妄想文。妄想文は蛇足だったかな~と思いつつ。
先生が甘すぎても石を投げないで下さい!!て気持ちです

(pict::相梅雨)